”関心領域”なんという題名。そして、原題もTHE ZONE OF INTEREST。ホロコーストの歴史について、わたしは数年前に大好きなメリル・ストリープの作品を制覇したいと観た『ソフィの選択』で衝撃を受け、あのおぞましい歴史については多大な関心を持っていた。
独裁者の偏ったあまりにも身勝手な思想に、人々がついていってしまうというのが理解に苦しみながらこれが現実に行われたということに目を背けてはいけないんだろうな、と。大人として、知っておくべき事実だ、と思っていたわたし。
だから、この『関心領域』はどうしても観ておきたかった。映画マニアの友人が一足先に、観た感想として”絶対に映画館の空間で観たほうがいい映画”と言っていたわけは、”アウシュビッツ収容所の隣で幸せに暮らす家族がいた”というキャッチフレーズにあるように、塀に囲まれた中で、塀の外からはおぞましい悲鳴や罵声が聞こえるのに、自分たちの関心領域は、塀の中の敷地内。夢にまで見た平和で理想的な暮らしを死守したいというギャップは映画館の音響の中で感じられるからこそ。
上映館が限られてきたなか、初めて阿佐ヶ谷の映画館MORCまで足を運んだ。こんな行動を起こすのは私にはなかなか珍しいことだけど、ミニシアター系の映画館には今年に入ってけっこう足を運ぶようになった。映画館で映画にだけ集中して観たい、ここでしか、今こそ観るべき、そんな映画がいくつもあって、それらを観たいという情熱に推し進められたようなそんな一年になった。
この『関心領域』は、予想していた通り、戦争と言うなのもと、見境もなくユダヤ人が大量に殺されている。なのに、平然と日常を過ごせる人が隣にいるというとても不気味な状況がとても伝わってきた。人が殺されている、というシーン自体はまったくない、血すら映像としてはないのだけど、ただ雑音のような声からそれを想像させる手法。
映画の感想としてはとても表現しづらい映画だった。なんていうかストーリーがわかりやすく流れていくのではなく、あの雑音みたいな声は何?、今一瞬、画像が止まったけど何?あれあ。セリフが少なすぎて、人物像がわからない・・・などストーリ仕立てではない。だから、見終えた後、「よくわからないけれど不気味だった」という感じになった。
おそらく、この映画を製作した監督はそれを狙っていたのかもしれない。
こんな信じられない虐殺が起きていたドイツ、アウシュビッツの歴史は映画の中の出来事ではない。
そして、わたしは最近、同じようにおぞましく信じがたく、嫌悪感を感じたこと。ロシア軍に北朝鮮兵が招集され、ウクライナの戦地に入った、という映像。信じられない。
人間とは、なんと獰猛な面があるのか・・・こういうことが起きていても、関心領域が塀の中であれば、どんなおぞましいことが外で起きていようとも「へぇー、ふーん」としか思わない。そうでもしないと、平常心で日常を過ごせないのか・・・
どうしたらいいんでしょうかね。こういう映画を観るべき人に届かないのが歯がゆい。