素敵な小説に偶然出逢えた。
森沢明夫の『大事なことほど小声でささやく』(幻冬舎文庫:平成27年出版)

この文庫本は、国分寺駅の南口にある小さな古書店に、ふらっと立ち寄った時に店頭で100円で売っていた本。タイトルに惹かれて手に取った。しかし、なんとなくそのうち読もうと家に帰ってからは本棚にポンとしまいこんで、かれこれ2年くらい経ってしまい・・・
2年経って、なんのきっかけというのはなく読み始めたら、くすっと笑える軽やかなジョーク混じりのネタ!?が盛り込まれてその後は心が温まってきて、文章が人間的になんともやさしい。さらに、ゴンママこと権田鉄雄の”人間らしさ”の魅力がたっぷりで、今を大事に、自分を寂しくしないように、皆、人のぬくもりを求めて日々を生きているんだなぁ、と想像すると、この都会の喧騒(と言う勝手な想像)も捨てたもんじゃないなぁ、と軽やかな気持ちになった。
それもそう、森沢明夫さんは、ハッピーエンディング作家と称される作家だそう。たしかに、こういう小説は読後、とても健全な気持ちになれて清々しい。
それで、私のなかで珍しく自信をもって他人にもおススメしたい小説となった。
読み終えてから1か月ほど経ったとき、ちょうどこの小説を紹介したい方と会う機会があった。わたしにとって、なんて言ったらよいか、”親愛なる”Iさんだ。
Iさんは、わたしの勤めていた会社の元上司。わたしが会社を辞めてからも、時折、仕事の相談や近況話をしようとランチをしたりする付き合いをさせていただいている。還暦を過ぎたIさんは七福神の大黒天のような雰囲気で、なんというかわたしよりいちいち感動して喜ぶので毎度それに感心してしまう。
そんな感動屋さんのIさんにはきっとこの小説は、合うんじゃないかな。この小説の良さを共感してもらえそう、そう、そう思った。
なので、久しぶりにお会いした時に、この小説の話をした。
すると、純粋なIさんは私と会った3日後には、その本を手に取って読んでいたのだ!
そして、
「いっきに読みましたよ!何度も読みながら嗚咽しました・・(感動マーク)。文中に何度も使われる「刹那」の表現もすてきです。」
とLINEがきた。
まさか、嗚咽するほど感動されただなんて・・・心が純粋としか言いようがない(笑)
さらに、彼は、映画版『大事なことほど小声でささやく』も観て、さらに、森沢明夫の作品が原作となっている高倉健主演の『あなたへ』や有村架純主演『夏美のホタル』も観たと嬉しそうに教えてくれた。
こういう好奇心のある方は本当に素敵だなぁ、と尊敬のまなざしになる。人の気持ちに応えられるというか、興味を持ってくれる、そういう人の存在って、やっぱり嬉しいものだ。