左卵巣にデルモイド(嚢腫)ができてそれを摘出した昨秋の話の続きです。
ブラックジャックのピノコと同じようなものがお腹にできた、という人生初の手術に向けて病気だという実感がなく、他人に病気自慢をしたくなってしまったわたし。
まずは、介護の資格講習のクラスがあったので、もともと病院に行くきっかけをくれたこの介護クラスの先生たちには報告しておかなければ、ということで報告すると「あの時のがきっかけで見つかってよかったね!」と皆励ましてくれた。講師の女性の先生はマンガオタクだという話だったので、目をくりくりさせてわたしを見つめている。
「先生、手塚治虫のブラックジャック読まれたことありますか?」と聞くと、先生はにやっと笑って「もしかして、ピノコ?」と・・・!そうそう、この反応、待ってました!と内心大喜びの私。「そうなんです、まさにピノコがわたしのおなかの中にあるんです。なんか、髪の毛が詰まっているらしくって、さらにお医者さんがエコー写真を見て”この白いのは、歯か骨の一部かもしれない”って言ってたんですよ」と言うと、先生はひゃーと驚きの顔。
「びっくりですよね!」ピノコの話が通じる人に早速出会えたことに大変満足した日だった。
しかしそのあと、胸がざわつく思わぬできごとがあった。手術入院の2週間前ほどのある日、わたしは、大人のための朗読会なる知的なワークショップに出かけた。元舞台役者だったというママ友が主宰しているのもあって、どんな本をセレクトし朗読してくれるのか、そんな文化的なことを純粋に楽しみに行ったのだが、そのママ友はロハスで自然派な思想を持った方なので、自然とワークショップにも似通った思想の女性たちが集まる。さらに、そのその会場となる場所は、民間療法のセラピールームも併設されていて、セラピストの方が常駐されていた。わたしは、とくにそのようなものを信じているわけではなかったし、気に留めてもいなかったのだが、朗読会が終わって、お茶を飲みながら、主宰者と参加者で談話していたときのこと。主宰のママ友が隣に座ったので「今日の朗読会とてもよかったです!わたし、近況報告なんだけど、卵巣に良性の嚢腫っていう腫瘍ができちゃって、この近くの病院に手術入院することになったの。」と伝えた。彼女は、当然のごとく、驚いて目をぱちくりしている。「でも、良性だし、腹腔鏡手術だから体の負担もなく簡単みたいなの。って最近、近況報告って言って病気自慢しちゃってて。。えへへ」なんて言っていたら、「悪いものとってすっきりできたらいいね」という話に落ち着いた。すると、その話を聞いていたわたしの向かい側に座っていた参加者の若めのマダムが身を乗り出し、「子宮系のって多いのよね、わたしも筋腫があるんだけど、もう閉経するから小さくなって手術しなくていいってことになって手術もせず今は何事もなく暮らせているのね。でね、わたしの知り合いも以前、子宮筋腫ができたんですって。病院からも手術して取りましょう、って言われて手術する予定だったの。なんだけど、壺のよもぎ蒸しで有名な先生がいるところがあるんだけど、そこによもぎ蒸しをしに行ったら、壺にその筋腫がぽろんって落ちたんですって!それで、そのポロンって落ちたものをその有名な先生が、解剖して分析したら”最近、添加物取りすぎていたのかもね。そういうのが見える”って言って、結局友だちは手術しなくて済んだらしいの。だから、あなたもよもぎ蒸しいったら、もしかしたら手術しなくて済むかもしれないわよ」と冗談交じりに言う。
知らない方のために簡単に補足するが、よもぎ蒸しというのは、穴の開いた椅子や壺に裸になり、全身を覆ったマントを着用した状態で椅子の下や壺でよもぎを蒸した蒸気を下半身に当てて体を内側から温める韓国発祥の伝統的温熱療法のこと。よもぎの蒸気が粘膜に触れることで有効成分が直接体内へ届き、成分を効率よく取り込これにより、体を温めるだけでなく抗炎症作用・鎮静効果も期待できるとされている。
だからと言って、よもぎ蒸ししてたら、膣の穴から筋腫がぽろんと落ちるなんてそんなことあるかいな・・・と耳を疑った。さらに、そのマダムは”今日は隣のセラピールームでやられている健康チェックを受けたくて楽しみにしてきたと声を弾ませている。「この健康チェックは、掌を機械に乗せるだけで5秒で150項目の体の数値を確認できるのよね。病院の人間ドックより正確なのよね。近代医療は病院と政治の金の癒着があるから信用できないしね。もうわたし病院の健康診断なんて何年も行ってないの。うふふ」と嬉しそうだ。
よくわからないが、わたしはひとまず「私のは卵巣に出来ているから、穴からぽろんとは落ちないんで、手術して取らなきゃなんで・・・」と言っておいた。思ってもいないような話ってとつぜん来るものだから、理解しがたい内容だと気持ちがざわつく。
家に帰ってから、わたしはうかつに場所を選ばずに病気自慢しちゃいけないな、と反省した。特に、自然療法とかスピリチュアルなマインドを持っていたり独特な思想の人間ってけっこう世の中にいらっしゃって、思ってもいないような解釈や受け取り方をする場合があり、自分の持っている知識や価値観とのズレに戸惑うので精神的に良くない。わたしとて、受け取り方を間違えば、彼女たちの話から解釈すると、わたしの卵巣嚢腫は食品添加物をとりすぎた食生活の乱れだということになる。そんなこと言ったら、世の中の女性みんな嚢腫ができることになるではないか。
反省はしつつも、やはり交友関係が意外に手広い私は、近況報告としてピノコができたことを告白する場面は何回か続いた。もちろん、人を選んで話すようにはした。
すると、わたしの親愛なる前に勤めていた会社の元上司にLINEで報告すると、原因不明で体の一部が生成されるようなものが体に出来たという不思議な現象に彼は”あなたの体の中にはいくつもの才能が存在するかも・・・いずれにせよ、お大事にしてください!”と返信が・・・元上司は、退職してからもわたしのことを心からいつもほめて応援してくれる、いわば褒めプロ(笑)。嚢腫すらわたしの才能だなんて、笑わせてくれるわ・・・!!笑わせないでくださいよ、と返事をすると”ピノコは才能の塊ですよ!”って。こういう思想は大歓迎。一気にネガティブな気持ちが吹き飛び、ポジティブ100%になれた。
入院と手術の話はまた次回へ。やっぱりポジティブに生きたいわよね。